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当グループホームは10年前にオープンし、その第１号の入居者が戸田やす子さん（仮名）です。戸田さんは夫が亡くなった後、１人暮らしをしていました。介護サービスを利用していましたが、認知症は少しずつ進みました。戸田さんの様子を見に来ていた長男は、火の始末を心配し、このままの生活は難しいと考え、入居が決まりました。
入居当初は、自宅に帰りたい気持ちや自分以外に入居者がいない状況から「家に帰ります」と荷物をまとめ、上着を着て玄関に向かう毎日でした。戸田さんの不安な気持ちを少しでも和らげたいと、職員は否定することなく、飽きるまで一緒に歩き続けました。入居者が一人、また一人と増えてくると、少しずつ他の利用者と家族や故郷などについての会話を楽しむようになりました。
また、戸田さんの部屋を自宅のようにくつろげる環境にしたいと考え、思い入れのある鏡台やいつも弾いていた大正琴などを自宅から持ってきました。鏡台を部屋に置くと、すぐに鏡台の引き出しに大事なものを入れる姿が見られました。大正琴を職員と共に練習するなど趣味の時間をつくることもできました。そして大正琴の演奏を披露する機会を設けると、職員や他の利用者に褒められ、とてもうれしそうにしていました。今では、自宅に帰りたいと言うことは少なく、事業所を安心できる場所と思って生活できています。そして戸田さんは96歳になりましたが、今でも変わることなく歩き続けています。
グループホームにおいても、自分の大事なものやなじみのあるものを身近に置き、自宅で生活するように過ごすことができます。趣味活動を継続し、コミュニケーション機会が多い環境で生活することで、心身状態の安定を図れます。
「愛の家グループホーム日野万願寺」（東京都）　スタッフ