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笹川メイ子さん（仮名）は、老人保健施設（要介護者を対象に自宅で自立した生活を送るために機能訓練をメインにする入居施設）で生活していましたが、在宅生活の継続は難しいという判断がされて、施設を探すことになり、当グループホームに入居しました。

笹川さんは長年、看護師として誇りを持って働いていたため、自分の考えがしっかりしており、他人の意見に左右されないところがありました。慣れた施設（老人保健施設）から転居する理由に納得がいかず、転居当日も興奮した様子が見られました。当事業所での生活にも拒否的で、厳しい表情や口調で話していました。笹川さんは治療のために入居していると考えており「往診に来て、体を診てほしい」とたびたび訴えました。

入居時から抱えていた「なぜここにいるのか」という不安を軽減するためにも、当事業所が居場所となるような支援をしていこうと職員間で話し合いました。笹川さんの看護師としてのキャリアを考え、役割を持つことで、事業所にいる意味を感じてもらえるのではと考えました。利用者の体温・血圧の測定時に一緒に回ってもらったり、机ふきや食事の準備などをしてもらったりしました。役割が決まると、笹川さんの世話好きな面がどんどん出てきて、多くの利用者に頼りにされるようになりました。今では「往診に来てほしい」と訴えることもなく、役割も自分のペースで行えています。レクリエーションにも積極的に参加し、仲間と穏やかに過ごす時間が増えています。

認知症の方は「時間」「場所」「人」の認識が弱まるため、環境の適応が苦手になり、不安や混乱が続きます。今回は役割をつくり、事業所を自分の居場所と感じてもらうことで不安を解消することができました。

「愛の家グループホーム八王子弐分方」（東京都）　ホーム長