※画像はイメージです。

高木里子さん（仮名）が当グループホームに入居したことを娘の紀子さん（仮名）は「本当に入居したことが母にとって良かったのだろうか？ 悪いことをしたのではないか」と悩む日がありました。

面会時に高木さんの居室で話す際は、紀子さんの顔を見るなり「私を連れて帰って、迎えに来たのと違うなら帰って」と強く言い、紀子さんは涙を流すことがほとんどでした。また母を悲しませてしまったと罪悪感にさいなまれ「２、３日立ち直れないんです。私も帰り道に泣いてしまうんです」と話していました。

この状況が続いて面会では、紀子さんが遠くから高木さんの様子を見るだけにとどめ、職員に高木さんへのプレゼントを託して帰るようになりました。新型コロナウイルスが５類になった際に職員は「他の家族と交流がしたい」と前に話していた紀子さんの言葉がずっと頭に残っていました。すべての家族に声を掛けて「愛の家パンケーキカフェ」を開催しました。当日はほとんどの家族同士が「はじめまして」のあいさつから始まりましたが、すぐに笑いが起こり、交流を楽しむことができました。この日は高木さんもずっと笑顔で話をして、日ごろから見せるおちゃめな様子や他の利用者と仲良くし、大声で笑っている姿を紀子さんに見てもらうことができました。

このイベント以降は、居室で面会をすると高木さんが怒ったり、泣いてしまうことが分かったため、他の利用者や職員との会話を挟みながらリビングで行うようにしました。紀子さんも忙しい中、月２回訪問し、レクリエーションや食事前の体操などに一緒に参加するようになり、もちろん高木さんも笑顔で過ごしています。「パンケーキカフェ」という楽しい雰囲気をつくったことがきっかけで、高木さんと紀子さんのわだかまりを少しなくすことができたようです。

「愛の家グループホーム大津月輪」（滋賀県）副ホーム長