※画像はイメージです。

83歳の高梨佳代さん（仮名）は物忘れが増え、それを心配した長女夫婦と一緒に暮らし始めました。長女の由紀さん（仮名）は、近くに住む娘と孫の世話をしながら高梨さんの生活も支えるという、慌ただしい生活を送っていました。親子で話のかみ合わないことが増え、ぶつかることが多くなり、高梨さんは当グループホームに入居することになりました。

面会時、高梨さんが何かをしようとして時間がかかったり、違うやり方をすると、由紀さんが代わって行う姿が見られました。由紀さんは、高梨さんができないことをやってあげなれければという気持ちが強く、高梨さんへの思いが強いだけに負担を抱え込んでいました。一方、高梨さんはできないことで落ち込み、２人の関係はこじれていったように見えました。

職員は、高梨さん自らが動くことのできる環境をつくりたいと、積極的に話しかけ、希望を聞くようにしました。高梨さんは、入居後１カ月くらいで「散歩に行きたい」と言い、散歩のたびにいろいろな話をしてくれるようになりました。他の利用者とも関わり、事業所の生活にも慣れ、今では新しい入居者が加わると面倒を見てくれるようになっています。

このような変化を由紀さんに伝え、現状で何が行えて何に介助が必要かなどを、専門的な目線で話しました。由紀さんは、高梨さんの変化や認知症の症状について知識を得て、現状を深く理解しました。この結果、２人は明るく会話ができるようになり、良好な親子関係を取り戻していきました。

認知症の症状などの知識がないと対応に苦慮し、介護する側・される側が共につらい思いをすることがあります。今回、専門知識のある職員が間に入ることで、高梨さんと由紀さんの関係は回復していきました。

「愛の家グループホームさいたま三室」（埼玉県）　副ホーム長