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森内裕子さん（仮名）は60代で認知症を発症し、サービス付き高齢者向け住宅に入居していました。生活全般の介助が必要になったことから、当グループホームに入居しました。
入居当初は職員との会話も理解していましたが、徐々に場所や状況を認識したり、会話を理解したりすることが難しくなっていきました。トイレに行っても何をすればいいか分からなくなるなど、判断ができないことがありました。
職員が森内さんの行動を観察すると、多くの言葉が含まれた表現で話しかけられると理解しづらいことが分かりました。複雑な言葉や表現を避け、できるだけ短い言葉にし、シンプルな表現で伝えるようにしました。また言葉だけでは伝わりづらいことについては絵やジェスチャーを使うようにし、視覚的な手がかりで情報を補足しました。森内さんの日々の行動から、そわそわと落ち着かなくなったときは尿意をもよおしている場合が多く、そのタイミングでトイレの絵を見せると笑顔になり、スムーズにトイレに行くことができました。
また森内さんは小学校の先生をしていた経験があることから「先生」と呼び掛けるとにっこりと笑顔になりました。そこで「先生、○○しませんか？」と声を掛けると応じてくれるようになり、今までやらなかった家事や運動などにも参加するようになりました。森内さんに合った働きかけを行うことで活動の幅が広がりました。
認知機能の低下などにより複雑な言葉や表現を理解することが難しくなることがあります。その方の状態や特性に合わせた工夫によって、コミュニケーションを取ることができます。また、生活歴などの背景や性格に合わせたアプローチで、意欲を引き出すこともできます。
「愛の家グループホーム市原国分寺台」（千葉県）　副ホーム長