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池口洋子さん（仮名）は、入居直後「帰る！」と興奮した様子が見られましたが、水分摂取など身体面のケアにより改善し、落ち着いて過ごされるようになりました。
職員が「自分らしく過ごせるように何かしたいことはないか」と聞くと、池口さんは「私なんかでは無理や。他の人に迷惑かけるだけ」と返答しました。そこで、どうケアをしたらよいか改めて状態を整理することにしました。池口さんは日々の生活の動きの中では介助を必要としませんでしたが、何かをする際、どこか不安そうな表情でした。認知症の発症以降、今までできていたことが「できない」という経験が多くなり「したい」という意欲が低下しているのだと考えました。
まずは「できた」という体験を少しずつ積み重ねるため、洗濯物畳みや洗濯物干しなどの家事を一緒に行うようにしました。また、その都度「ありがとう」と伝え、できたことを実感できるように関わりました。そのような関わりを続けていく中で、表情も柔らかくなり、さらには「庭の草が気になるから、草むしりしないとね」と自ら話されるようになりました。それ以降、毎日、少しずつ池口さんと職員で草むしりをするようになり「あれもしようかな」と話すようになりました。今では、年始が近くなり職員がわらを用意すると、認知症になる以前に自宅で行っていたようにしめ縄を編んでいます。
介護が必要になり誰かに支援を受ける経験が増えていく中で、何かを「したい」という意欲が低下することがあります。今回の池口さんのように、日々の活動の中で「できた」という気持ちの積み重ねが、何かを「したい」という意欲の回復につながります。
「愛の家グループホーム大和西大寺」（奈良県）　スタッフ