※画像はイメージです。

越田さと子さん（仮名）は夫の隆司さん（仮名）と２人で生活をしていました。仲が良く、周りからうらやましがられる夫婦でした。しかし、５年ほど前から越田さんの認知症が進行し、物忘れと、夫や長女への被害妄想が目立つようになりました。２人での生活は困難となり、当グループホームへの入居が決まりました。

入居当初、越田さんは混乱し「どうして私はここに来たの？家族に捨てられた」と繰り返していました。家族は夫や長女への被害妄想がひどくならないようにと、長男のみが面会に来ていました。私は、長男から毎日電話してもらうことで、越田さんの安心につなげたいと考えました。また、他の利用者や職員と話しやすい関係をつくり、散歩に出かけるなど活動を増やしました。越田さんは、少しずつ事業所の生活に慣れ「捨てられた」と言わなくなりました。

３カ月が過ぎた頃、越田さんが「次回はお父さんと一緒に来てほしい」と長男に話をしました。長男は越田さんが再び混乱するのではと心配しましたが、次の面会時に夫も来てくれました。越田さんは夫の手を握り、うれしそうに話しました。夫は名残惜しそうにしながら帰宅し、その後も面会に来ています。半年が過ぎると越田さんは「帰りたい」とも言わなくなりました。長男と夫に「今度は長女も一緒に来てほしい」と伝えました。長女は夫以上に心配していましたが、職員同席という条件で面会に来て、穏やかに会話を楽しむことができました。越田さんの部屋には家族全員で撮った笑顔の写真が飾られています。

できることが少なくなると「迷惑をかけている」「邪魔な存在だ」と寂しさを強め、身近な人への被害妄想や「見捨てられた」という思いにつながることがあります。寂しさを取り除き、できる活動を増やすことで自信を回復し、症状も改善します。

「愛の家グループホーム広島温品」（広島県）　ホーム長