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伊藤忠則さん（仮名）は妻を亡くしてから認知症の症状が見られるようになりました。
伊藤さんは届けられた宅配弁当を食べていなかったり、１人での外出時に危険なことが増えていきました。
長女は伊藤さんの１人暮らしに不安を感じ、当グループホームへ相談に来て、入居が決まりました。
入居当初、歩き回り、落ち着きがない状態でした。
声をかけると怒りだし、介助されるのも嫌がるため、職員は伊藤さんを敬遠しているようでした。
伊藤さんと話をするきっかけをつくることを目的に家族から話を聞くことにしました。
伊藤さんは野球の監督をしていたため、自分の体にも気を付け、よく歩いていたことが分かりました。
孫を岐阜城の近くの保育園まで送るのを日課としていたので、岐阜城がとても好きだということも知りました。
散歩の誘いを断ることはなく、雨でも雪でも毎日散歩に行き、歩きたいだけ歩いてもらうと、５キロ程度歩くこともありました。
大好きな岐阜城に行き、周囲を自由に歩くこともありました。
最初は話が続きませんでしたが、家族から聞いた話題を持ち出すと、自分から話すことも増え、冗談も言ってくれるようになりました。
伊藤さんが怒ることが減ってくると職員からの声かけも増え、さらに伊藤さんとの距離は縮まりました。
そして10年以上たった今でも、押し車を押して歩き、落ち着いて穏やかに生活できています。
認知症の方は環境の変化が苦手なため、介護施設における職員やその介助を受け入れないことがあります。
しかし人間関係を構築するには、接触機会を増やし、信頼してもらわなければなりません。
今回、伊藤さんが好きな散歩を通して接触機会を増やすことで、会話が生まれ、伊藤さんとの関係構築ができました。
「愛の家グループホーム各務原三井町」（岐阜県）