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田代静雄さん（仮名）は妻と２人暮らしをしていました。身体の一部分の壊死により手術し、退院後は自宅生活が困難とのことで、当グループホームに入居となりました。

田代さんは事業所での生活にはすぐ慣れましたが、食欲がありませんでした。食べられるものを少しずつ食べて食事量が増えてきた頃、体調の変化がありました。田代さんの顔面蒼白（そうはく）と気だるさについて医師へ報告すると、貧血があることが分かりました。その後、黒い便も見られるようになり、状態は悪化していきました。家族から「皆さんの声が聞こえる所で笑って最期を迎えてほしい」と希望がありました。末期の大腸がんと診断された後、家族は事業所に泊まり込み、昼間は長女、夜間は妻が付き添いました。田代さんをケアするとともに家族の思いに配慮し、家族への声掛けも忘れず、「笑って過ごす」ということを大切にしました。

田代さんが息を引き取る瞬間、妻が立ち会い、医師の確認後、長男、長女夫婦、孫も集まり、家族と職員で田代さんの身体を拭き、着替え、化粧をし、見送りました。家族から「父はここで最期を迎えられて良かった。父とこのようなかたちで一緒の時を過ごせたことは私たちにとってかけがえのない時間になりました」との言葉をもらいました。看取（みと）ることへの恐怖を感じている職員もいましたが、このような言葉をもらうことで自分たちの看取りケアの必要性を感じるようになっています。

約８割程度の方が病院で最期を迎えます。ただ、延命治療を行わず、家族に見守られ最期を迎えることを希望する人も増えています。グループホームのように地域密着型の住み慣れた施設で家族に囲まれ、なじみの職員に最期までケアをしてもらうことで、家族も本人も穏やかな時間を過ごすことができます。

「愛の家グループホーム白井冨士」（千葉県）ホーム長